
第4回 前田 隆人さん(川本町・下新町)
川本町の商店街“弓市商店街”の一角にある『街角ギャラリーマエダ』。前田隆人さん(76歳)は、ここを自宅兼ギャラリーとして構え、町内外を問わず多くの人々が交流し、活気ある町に戻って欲しいと願いを込めた活動を行っている。

大阪や京都で45年を過ごし、川本町へUターンを果たした前田さん。約半世紀ぶりに戻った自分が、町の活性化、人々が集まりにぎわう場所作りができればと、無料のギャラリーを開設し、広く出展者を探した。ギャラリーでの企画展は着実に回を重ねていき、そこで知り合った人々との新たなつながりも出来た。今では、邑智郡全域に出展者の輪が広がり、絵や書に関わらず、手づくりの小物やパッチワークなど個性的な作品が並んでいる。
また、ギャラリーに集まった人々との会話がきっかけで、木工グループ『かわもと夢工房』や『グラウンドゴルフ同好会』、さらには『江の川えびクラブ』が誕生し、そのいずれにも前田さんは所属している。

『江の川えびクラブ』には、子どものころ川本町を流れる江の川で“テナガエビ”を捕った思い出のある人々が集まった。
「思い出の川エビ捕りは、中高年齢者の生きがいにつながる」
と感じた前田さん。
20人の同志でクラブを結成し、島根県の事業に申請。助成金によってテナガエビの“保育池”を川本町・谷の県道沿いに造った。池の周りには、人々の憩いの地になればと『かわもと夢工房』によって建てられた吾妻家(あずまや)や水車を設置し、『やすらぎ公園』と名付けた。公園では、移動式の屋台を借りて自分達で料理をすることも出来る。
テナガエビのシーズンは夏のため、オフには“ヤマメ”を池で育てている。常時300匹のヤマメがおり、定期的なエサやりや釣り体験などを行っている。
「金儲けなんて、コレっぽっちも考えていない」
童心を忘れないというのは、なにも現在の大人たちだけに向けたものではない。
地元の小学生に、この池でヤマメ釣りを体験してもらった時、釣り方や針のはずし方など分からない子が居たと言う。そんな子には、大人が代わってやってあげるのではなく、やり方を説明し自分でやってもらう。そうすることによって、子どもたちが実際に体験できると同時に思い出に残すことができる。そんな思い出を持った子どもたちが成長し、「昔、こういうことをやったなぁ」と感じることで、ふるさとの良さを知り、地元へ帰ってくるかも知れない。
前田さんは、そう考えている。

「休みには、子どもたちにもTVゲームをしないでここへ来て遊んで欲しい」
デジタルで便利な時代になり、仕事も遊びも、室内でパソコンやTVの画面の前で過ごすことが多い。そんな中、たまの休みには『やすらぎ公園』に出かけて、優雅に泳ぐ魚を眺めたり、近くを流れる川のせせらぎに耳を傾けながら憩い、癒されて欲しい。
前田さんは、この地を多くの人々に利用してもらうことで、心を癒し、明日への活力にして欲しいと願っている。
「まず、川本町へ来てもらうこと」
自分たちが育てているエビやヤマメを、対外的に販売しようという気はない。
それらを体験したり味わうには、一度でも川本へ足を運んでもらい、川本の空気を感じてもらうことに意味があるのだと。
ギャラリーを通じて多くの仲間が出来た。
その仲間の輪がどんどん広がり、新たな輪を形成していく。
自然に囲まれ、気の合う仲間たちと過ごす時間が心のゆとりを与えてくれるのかも知れない。
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